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不幸中の幸い、ってこういうのを言うのかもしれない。あたしはその救い主になってくれるかもしれない人を振り返る。
髪は黒、男の人としては長くも短くもない。ピシッと学生服を着込んでいて、右手には学生鞄を持っている。体つきはほっそりとしていて……あんまり強そうには見えない。
「ん? 両手に手袋……まさか」
そして、鼻ピアスが呟いたように、冬でも無いのに、男の人は真っ白い手袋を両手にしていた。鼻ピアスの顔が、見る間に青くなり、睨んでいたキンパツの肩をつかむ。
「ば、馬鹿! こいつ、西高の九条だよ! 『歩く死神』だよ!」
「! う、嘘だろ!」
途端にキンパツはその手を離し、あとずさって、鼻ピアスと顔を見合わせる。
「こんな奴に関わったら命がいくつあってもたりねえよ!」
鼻ピアスの叫びは、真に迫っていた。背を向け、二人は一目散に逃げ出す。
あたしはぼんやりと、男の人を見上げた。目付きは悪いけど、鼻はソコソコ高いし、顔立ちも整っていて、細身だけど、背は百七十五くらいある。総合的に、美男子って言ってもいい……喧嘩なんてゼンゼンしそうに見えない。ましてや、死神なんて単語は……
その人はあたしを見下ろしていると、声もかけず、何事も無かったかのように歩き出し、路地裏から消えていった。
しばらくして、あたしは我に返った。