ルウィスパー15
いや、悪い人じゃないんだけど……」
「すまん、俺、急用を思い出した」
「イジメじゃないよ……でも、そう……仕方ないんだよ」
「不承不承だろうけど、彼も納得しているはずだよ……現状に」
こういう返事ばかり……一体、井端君は何者なんだろうか? もういい加減ヤキモキしていたあたしは、みんなが帰るのを待ち、九条君に直接話しかけようと企んだのだ。
校舎が夕日で赤く染まり、廊下に影が映し出されている。あたしは校舎内を見学して時間をつぶしつつ、九条君が一人になる放課後を待った。なぜか彼は放課後、七時ごろを過ぎても教室で一人いる事がある。先週は三回も。
一昨日、昨日と早く帰ったが、今日は当りだったらしい。二年一組の教室に戻ってくると、遠目から彼の姿を見る事が出来た。
「……さんが……って」
誰かと話している? 今日までの一週間で、九条君が話している所をあたしは見たことがない。興味が湧いたあたしはこっそり教室に近づき、彼等からは見えない位置に潜んだ。
「わからない……なんだけど……」
ああ、駄目だ、所々聞こえない。それと、九条君が話している相手も確かめたい。