ビルパ
……返答無し、か。つれんな。
さて、愚か者にはオレが何者なのかわからん者もいるだろう……。一応、無知な者どものために自己紹介をしておいてやろう。
オレの名はジン。ある愚かな人間の心の『境界線』から這い出てきた悪魔。
オレの力は……実際見せてやらなければ凡人共には理解できまい……ククク……
授業も終わり、今は一人きりだ。教室の電灯を消し、廊下から洩れてくる光源でかろうじて視界が確保できる。
しかし、あの助けた女子高生が転校生だったとは。どうだ、その転校生にお前が友人だと思っている人間から、危険だから近づくな、と言われた時は? どんな感情が込み上げてきた? 憎しみか? 悲しみか? 無力感か? 怒りか?
「……幸一」
その暗闇の中に足を進めてくるのはこいつの友人だ……名を、俊也と言う……オレがこの肉体を掌握できない要因の一つがこいつ。
忌々しい限りだ……幸一以外に、これほど精神力の強い人間をオレは知らん。
オレとしては、快楽云々を抜きにして、どうにかして殺したい相手だ。
しかし、その歩みが止まる。幸一が無言で手をかざし、これ以上来るな、と制止させたからだ。
「今日は、聞きたいことがある」
ほう? いつもならば二人とも無言か、幸一だけが喋るものを。
「三桜さんと、どこで知り合ったんだ?」
トシヤは一番廊下側の席に腰掛けた。僅かな光源からは少々戸惑った声が聞こえてくる。