ガビルウィスパー9
「…………」
電灯が再び、ジジジ、と音をたててついた。
(そうだな……お前がもっと、きっちり説得しようと思えば、こいつを助けられたかもしれんぞ? そもそも殺し合いにならなかったんだからな)
唇を強く噛み、どうにか無視を続ける……ククク、いつもならば俺の囁きに対し、幸一は常に無感動に無視するのだが……いかに強固な精神を持っていると言っても、所詮は人間。特にこいつのような偽善者は、敵であろうと相手を殺してはまともでいられんらしい。中々不便なものだ。
不安、悲しみ、自責の念……そして、オレに対する憎悪……普段は無表情という仮面をその顔に被っているが、いつまでもつやら。
「…………」
ぽつり、ぽつりと雨が降り出す。
女がこの世で最後に浮かべた表情―驚き―を幸一はただ眺めている。
(さぞかし無念だったろうな。貴様を殺すことが、世のため人のためと信じ、その結果がこのザマだ。あまりにも哀れだな。年は、お前と同じくらいかな? それとも一つ二つ上か? やり残したことがたっぷりとあるだろうな? こいつの家族はこいつの死を知ったらどう思うだろうな?)